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第三回集中稽古会



一年ぶりの集中稽古会が無事終了。
今回のテーマは『型で稽古する』。
手順通りに型を演じることを目的とせず、いかに型を深く読み解き、そこに込められた技術を自身の裡に獲得していくか。
型を用いて稽古ができるようになるために必要な観念をしっかりと共有すべく、朝から晩まで丸一日の稽古を構成した。
各人の成長は目覚ましく、教え手と受け手が噛み合ったとき、ものの五分でその場の全員の動きががらりと変わるのを目の当たりにする瞬間もあった。


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受身 【実践編】

前回からの続き、実生活で受身が役立った経験その①。

10年くらい前、上野動物園内のフードショップでバイトしてた時のこと。
売店隣のウッドデッキで待つお客さんに揚げたてのチキンBOXを届けようとしたのだが、その日は雨上がり。
濡れた床板はぬるぬると滑り、足を取られて思い切りバランスを崩してしまった。
数歩よろめいたところで立て直しを諦め、手に持った商品は水平に維持したまま華麗な後受身で軟着陸した。
驚いた顔のお客さんに「チキンは無事です」と箱を手渡し、颯爽と店内に戻ったのであった。
受身【実践編】-1


そしてもう一つ、受身の経験その②。

この時は老人ホームで働いていて、夜勤明けに自転車に乗っての帰り道でのこと。
疲労で注意散漫だったのだろう、赤信号に切り替わったタイミングで飛び出し、横道から出てきた乗用車に撥ねられた。
その瞬間、一瞬で状況を把握し、すごく冷静に思考を巡らせたのを覚えている。
自分の自転車に身体が巻き込まれるとまずいなと思い、撥ね飛ばされながら車体を持ち上げて身体から遠ざけ、意識的に顎を引いて頭部を守って転がった。
車が動き出したばかりで速度が出ていなかったこと、直接衝突したのが身体ではなく自転車の前輪だったこと、そして撥ねられるまで車の接近に気づいていなかったことがかえって幸いした。
ぶつかる直前に車が見えていたら、緊張して身体を固めてしまったかもしれない。
着地の際に両の前腕を擦りむいたが、それ以外は痣一つ作らずにすんだ。
運転していたご夫婦は病院に行きましょうと言ってくれたが、「いえ、受身を取りましたので」とかっこよく言い残し、ひん曲がった自転車を押して去ったのであった。
受身【実践編】-2

受身は大いに役に立つ。
そして、良い子のみんなは赤信号に飛び出さないよう気をつけよう。


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受身

受身

正直言って、古武道の技法がそのままの形で日常生活に活かされることってほとんどない。
そりゃまあ、稽古で培った基本原理が暮らしの質をじんわりと高めてくれたりはするけれども、夜道で突然大上段に打ち込んできた不審者を剣術奥義・下段籠手で成敗する機会は一生のうちに…多分、ない。
そんな中唯一、即物的に役立つというか、現代人にとっても身につけておいて大いに有益だと思えるものがある。

受身である。

昨今では、高齢者向けの転倒予防体操として脚力強化のプログラムなんかが広く行われていて、それはそれで非常に素晴らしいことであり、みんな足腰がどんどん強健になればいいと思うのだけれど、じゃあ死ぬまでどこにも躓かず一度も転ばずに過ごしなさいって言われると、さすがにちょっと自信がない。
この先あと50年近く生きたとして、一回くらいはうっかり足を滑らせることも避けられないんじゃないかなあ。
そんな時へのもう一つの備えとして、身体を壊さずに受身を取れる技巧は持っておいて損はない、と思う。

そして面白いことに、うまく転べるようになると、逆に今度は転ばなくなる。
いざとなれば受身を取れる自信があるから、バランスを崩した時にも落ち着いて、力まず柔らかなまま対処できるようになる。
受身が身についていることで、受身を使わざるを得ない状況に自分を追い込まずに済む。
武の理想形である。

ここまで書いているうちに、実際に僕の人生の中で受身が役に立った事例を二つばかり思い出した。
続きはまた次回。


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呼吸法

呼吸

最近、稽古場で会員たちを見ていて気にかかること。
呼吸が浅い人が非常に多い。
10秒間、続けて息を吸えない人が何人もいる。

まずは、深く大きく、呼吸ができるようにすること。
特殊な呼吸法とか、丹田とか氣とか、そういう小難しいのはとりあえず置いといていい。
肺を浅くしか遣えていないうちにそんなの気にしたって解りっこない。
腹を柔らかく動かし、長く、たくさん吸って、たくさん吐く。
素人の呼吸法なんてそれで充分。

もちろん呼吸が巧いから武術が強いというわけではなく、それはあくまで要素の一つに過ぎない。
それでも呼吸の深さは身体深部の脱力、柔らかさと密接に関係している。
持久力、疲労の回復、深部からの発力、意識の置き方、様々な面で影響を受ける。
少なくとも、僕は息遣いが下手なまま柔らかな動きに秀でた人を見たことがない。

特に稽古場で時間を割いて取り組んだりはしないのだけど、こういうのは日常の中でちょっとずつ。
ふと気がついたときに、意識してちょっと多めに吸って多めに吐く。
あまり難しく構えずに気長にやってると、そのうち身体が変わる。


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型と個性

型と個性

型稽古に個性は要らない。

スパーリング主体の稽古体系ならばそれぞれの得意手を伸ばしていくことはむしろ必須であろうが、型においては徹頭徹尾、指定された条件を指定された方法で打開してゆくことのみが求められる。
そこでは個人の特性を活かした奇手を放つことは許されない。

こう書くとずいぶん窮屈に思えるが、それも型稽古から得られる理合に自分に思いつく程度の策など軽く超えていく価値があると思えればこそだ。
各人個別の得手に頼ることを許さないということは、言い換えれば型は誰しも習得し得る心身の遣い方を伝えようとしているということになる。
その技法が根源的で理に適っているからこそ、そこに個人の工夫を差し挟んでは本来の意義から遠ざかってしまう。

試行錯誤は全て、我を抑え、型の伝えんとする理合を読み解くことに傾ける。


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プロフィール

ピンクさむらい

Author:ピンクさむらい
東京都武蔵野市にて、古武道萬葉塾を主宰。

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